スカイハイレトロ

こんにちは。時間が過ぎ去るのが早すぎて人生の短さを感じます。

さて以前お話ししていた歯周再生療法のご紹介です。

歯周病が進行すると歯を支える顎の骨が溶けてしまい、さまざまな問題が生じてきます。そして、骨吸収が一定以上になると抜歯が必要となります。

そこで「一定以上」になる前の段階で、骨や歯周組織(歯肉、歯根膜)を増生し歯周病が進行しづらい状態を獲得するための処置を「歯周組織再生療法」といいます。これまでブログで紹介した歯肉移植なども言うなれば歯周組織再生療法の一種といえます。

よくインプラントを埋めるために骨造成(GBR、サイナスリフトなど)が行われますが、これはすでに歯を失った部位に骨を増生する処置になります。もちろんこれも非常に難しい処置ですが、歯が関係しない分、天然の歯を保存するための歯周再生療法と比べてシンプルである、とも考えられます。

1回の手術で扱う組織の種類が多いほど、それぞれがきちんと増生、定着してくれる状態を得ることは難しくなりそうですよね。

ここで症例をひとつ。まだ経過観察中の症例になります。

右上の前から5番目と6番目の歯の間の骨が吸収して、5番目の後方に9mmの歯周ポケットが存在しています(正常値1〜3mm)。以前他院にて外科処置を受けた既往がありました。

当院での基本治療終了後(大事)、ポケットが残存していることを確認し、再生療法の適応であると判断しました。術前の審査で根の先端までの骨吸収を認め、歯の神経血管の組織はすでに壊死、感染していることがわかったため、再生療法前に根管治療を行いました。

再生療法において重要なのは、再生させたい部分への血流の維持になります。切開すると血管が切断されるので血流が減ります。そこで切開を最小限にする方法がさまざま示唆されてきました。今回は最も重要な部分に直接切開を加えないNIPSA(Non-Incised Papillae Surgical Approach)を選択しました。

根の先端寄りの部分に水平的な切開のみを入れて、歯冠の方へめくり上げるようにして視野を確保します。

キュレット、Er:Yagレーザー等を用いて患部の不良肉芽組織を徹底除去し、根面を滑沢にします。

EDTAによる根面の処理後、FGF-2製剤と骨補填剤を混和したものを充填し、速やかに閉創します。

12日後の抜糸時です。切開が1箇所で単純なため、裂開するリスクもほぼありません。

術前と術直後のレントゲンの比較です。5番目と6番目の間に骨補填剤が充填されている様子がわかります。

術後2ヶ月経過した現在、特に異常は現れていません。6ヶ月の治癒期間を待ち、検査をしてポケットの減少を確認できたところで治療完了となります。

また後のブログでご紹介できればと思います。

木村




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